発酵性食物繊維普及プロジェクト SPECIALインタビュー
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腸と健康の関係について早い時期から注目していたという医師の小林暁子先生。あらためて今、腸内環境へ効果的にアプローチする「インナーケア」について、小林先生にお聞きしました。
体調不良が「腸の力」に注目するきっかけに
―腸と健康とのつながり、そして小林先生が腸内環境という分野に注目するようになったきっかけは?
腸の重要性を感じはじめたのは、腸活ブームより前のこと。自分の体調をなんとかしたいと思ったことがきっかけでした。もともと私は若い頃からひどい便秘症を抱えていたんですが、両親も同じでしたし弟は過敏性腸症候群で特に疑問を抱かずに過ごしてしまったんです。そうしている間に20代も後半に入ると吹き出物がひどくなったり、自分の患者さんから風邪をもらうことが増えました。体力も無く、今思えば睡眠も良くなかったと思います。あとはストレスがかかると一気に胃に来ましたね…。そんな自分の状況を俯瞰してみたときに、腸の問題が関係しているのではとほとんど直観的に思うようになったんです。
また当時は総合診療科にいたんですが、女性の患者さんの訴えを聞くと、1つの共通点があることにも気づきました。どこの科でも解決できなかった不調を抱える女性患者さんの多くが、腸の問題を抱えていたんです。当時は便秘は月経前になる方もいるということで、あまり腸の状態を重視する風潮がなかったんですが、肌荒れやアレルギー、鬱などを抱える方々が腸内環境を整える食事に切り替えて症状が改善されていく様子を見て、「腸の力」というのを実感していきました。
―実際に、腸活でアプローチする「インナーケア」には、どのようなメリットがあるでしょうか?インナーケアと美しさのつながりについても教えてください。
美しさの在り方が、時代と共に変化してきていると思います。以前のような表面的な美しさから、最近では健康こそが美という感覚が定着しつつあるのではないでしょうか。しかし健康を保ち続けることは誰にとっても簡単ではありません。そのためのアプローチの1つが「インナーケア」だと思います。
インナーケアを続けていけば、腸内環境が整い免疫力が上がりますし、それに伴って体力もついていきます。また腸内の血流も良くなり、セロトニンが生成され、メンタルケアにもつながっていく。よく、心の在り方は変えることができないと思われがちですが、インナーケアを行うことで身体側から心にアプローチすることもできる。これらの良い循環が見た目にも反映され、外的な美しさにもつながっていくのだと思います。
今までの食事に追加することで、「多様な食材」を摂取する
―インナーケアは何からはじめればよいでしょうか?第一歩を教えてください。
まず、完璧主義はやめましょう。インナーケアは食事で行うものですし、食事は毎日摂らなければなりません。すべての食事でパーフェクトを目指すのは不可能ですから、ダメな日があってもいいのです。
ポイントは、食の多様性を意識すること。核家族化が進んだことで好みの食材に頼ったメニューになりがちですが、できる限り数多くの食材を摂った方が腸内細菌の多様性にもつながります。白米を雑穀米にしたり、パンを全粒粉にする。ヨーグルトにシリアルを追加するなど、今までの食事に何かを追加していくやり方が楽かもしれません。旬の味覚を味わうのもおすすめです。
また糖質制限ダイエットが流行った頃は、食物繊維が不足し、便秘気味になる患者さんが多かったです。そういう意味でも多様な食材という考え方は大切ですね。さらに最近では、腸内環境へのアプローチも変化してきています。単に腸内細菌を摂る方法から、発酵性食物繊維などの菌が好む餌を摂って、その餌の分解をさまざまな腸内細菌にリレーさせていくクロスフィーディングがありますが、菌に餌のリレーをさせるためにも「多様な食材」が1つのポイントになりますね。
―たしかに発酵性食物繊維に脚光が集まっていると感じます。小林先生が注目する理由は?
まず、腸内細菌が生成する短鎖脂肪酸がいかに重要かわかってきたところが大きいです。短鎖脂肪酸は、腸内細菌が食物繊維を発酵させてつくる栄養分のこと。腸の動きを良くして腸壁のバリア機能を高めたり、炎症抑制、免疫システムの調整、血糖値をコントロールして体脂肪の増加を抑えるなど身体にとって有益な仕事をしてくれるのですが、この短鎖脂肪酸は発酵性食物繊維を摂ることで多く生成できることがわかっています。また発酵性食物繊維は、クロスフィーディング(腸内細菌の餌のリレー)を誘引します。この餌のリレーが新たな短鎖脂肪酸を生成するという良いサイクルを生み出していくのです。
―最後に、インナーケアの効果はどのように見ていけばよいでしょうか?
腸はすぐには変化しません。少なくとも1ヶ月以上の長いスパンで見ていく必要があります。個人差もあるので、インナーケアを取り入れて1〜2ヶ月ほど経っても変化がなければ、別のアプローチを考えてもよいかもしれません。あとは、ふだんから腸の機嫌をうかがうこと。腸を意識してあげれば、末長く健康で、美しくいられるはずです。そのツールとなる発酵性食物繊維の存在に、注目していきましょう!
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