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腸活は次なるステージへ

腸活の変遷と腸活最新研究

全身の健康の要である腸
腸活は新たなステージへ​

第2の脳ともいわれる腸。便秘など腸が不調のときには肌荒れやだるさなど腸以外の部位にも不具合が生じやすいせいか、多くの人が腸活を心がけているようです。腸活という言葉が使われるようになったのは2015年頃からですが、20世紀後半には善玉菌・悪玉菌という言葉が生まれており、実質的な腸活が行われていました。腸内環境を改善するための有用菌や、便のかさましとなる食物繊維等の摂取という腸活法です。つまり、これまでの腸活は便通を良くしようというものでした。しかし今、腸活は新たなステージを迎えています。腸内細菌が作り出す成分が全身の健康に寄与することが科学的に解明されているのです。

新腸活にカンジンなのは「発酵性食物繊維」
​~腸内細菌に代謝物を作らせる​

研究の飛躍的な進展で、腸内細菌が作り出す有用物質「短鎖脂肪酸」がさまざまな健康機能をもたらすことが明らかになってきています。重要なのは、この短鎖脂肪酸を作ること。短鎖脂肪酸は大腸で利用されるとともに血流にのって体中に運ばれ、全身の健康に関与します。​

短鎖脂肪酸は、食事で摂った食物繊維を腸内細菌がエサにして発酵(代謝)させることで作られます。つまり、新腸活とは菌によって発酵しやすい「発酵性食物繊維」を積極的に摂ることです。これまで食物繊維は便のかさをましたり・軟らかくしたりするものと認識されていましたが、実は「発酵による有用成分の産生」と大変重要な役割があることがわかったのです。

腸活の歴史

腸活の歴史の年表

腸活最新研究
~腸内代謝物「短鎖脂肪酸」が叶える長寿と健康​

続々と発表される新腸活についての最新研究​
~京丹後、ブルーゾーン:カギは「発酵性食物繊維」

腸内細菌と健康の関係についての研究は、世界でも日本でも進んでいます。日本での代表的な研究が、2017年から進行中の京都府立医科大学による京丹後地域※1に住む人を対象にしたコホート研究(観察研究)です。100歳を超える方の割合が全国平均の3倍以上で、病気も少ない長寿地域・京丹後で65歳以上の住民の暦年齢に影響する腸内細菌叢を解析したところ、血管や免疫などの若さが維持できている人には「短鎖脂肪酸」を作る菌が多いことがわかりました。また、その他の地域※2の住民に比べて、野菜や果物・豆・芋・根菜類・全粒穀類・海藻などを食べる頻度が高く、「発酵性食物繊維」の摂取量が多いことも確認できました。これらの結果から、腸内細菌が発酵性食物繊維をエサにして作り出す短鎖脂肪酸が若さや長寿につながっている可能性が考えられています。

米国のベストセラー・ビジネス書で選ばれた、世界で100歳以上の割合が多い5つの長寿地域・ブルーゾーン※3の住民が100歳まで生きる確率は、米国住民の約10倍といいます。この5つの地域の共通点は何世紀にもわたって全粒穀物・野菜・じゃがいも・豆類を豊富に摂取していること。京丹後地域の高齢者の食生活とも通じています。長寿のカギを握るのは、発酵性食物繊維&短鎖脂肪酸ということのようです。

※1 京丹後市、宮津市、与謝野町、伊根町
※2 京都市内
※3 イタリアのサルデーニャ島、沖縄、米国のカリフォルニア州ロマリンダ、コスタリカのニコジャ半島、ギリシャのイカリア島
ブルーゾーン(世界で100歳以上の割合が多い5つの長寿地域)の図
◾️ブルーゾーン(世界で100歳以上の割合が多い5つの長寿地域)

COLUMN

「短鎖脂肪酸」最新研究

有益代謝物「短鎖脂肪酸(Short-chain fatty acids)」は、世界中で注目されて競うように研究されており、新しい健康効果が続々と報告されています。

短鎖脂肪酸の健康効果に関する最新研究

脳機能改善​
発酵性食物繊維(イヌリン)の摂取で、短鎖脂肪酸を作り出すビフィズス菌の増加と、高カロリー食の刺激に対する脳の活性化減少(食欲抑制)を確認。発酵性食物繊維が、微生物-腸-脳のコミュニケーションの改善を通じて、恒常性維持や快楽的な脳機能を改善する可能性がヒトにおいても示唆されました。[無作為化対照被験者内クロスオーバー試験] 出典:Medawar, Evelyn et al. Prebiotic diet changes neural correlates of food decision-making in overweight adults: a randomised controlled within-subject cross-over trial. Gut. 2024, 73(2), 298-310
血圧抑制
高血圧患者を対象にした試験で、短鎖脂肪酸(酢酸、酪酸)を多く作り出す発酵性食物繊維(難消化性デンプン)の摂取によって、年齢、性別、BMIに関わらず、副作用なく、24時間収縮期血圧の臨床的に重要な低下が示されました。また、短鎖脂肪酸のレベルを上昇させ、短鎖脂肪酸生産菌の増加も認められました。 出典:Hamdi A Jama et al. Prebiotic intervention with HAMSAB in untreated essential hypertensive patients assessed in a phase II randomized trial. Nat Cardiovasc Res. 2023, 2(1):35-43.

短鎖脂肪酸そのものを経口摂取しても、小腸で吸収されて、ほとんどが大腸までたどり着きません。短鎖脂肪酸を増やすためには、食事で発酵性食物繊維を摂って腸内細菌によって作り出す必要があります。

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